藤沼文庫は、当研究所の研究資料の中核をなすものであり、2025年の研究所開設に際し、30年にわたりオーラル・ヒストリー分野で多大な業績を残されたオーラル・ヒストリアンの藤沼敏子先生より寄贈された貴重な図書群であります。収録冊数は約300冊にのぼり、中国残留邦人(残留婦人と残留孤児)に関する研究において不可欠な資料を包含しております。満蒙開拓、戦後の引揚げ、戦前・戦後の日中外交史、残留邦人が日本および中国両国で経験した社会的・文化的状況など、幅広いテーマをカバーしており、現在では入手困難な希少本も含まれております。例えば、アマゾンや古書店でも見つけることができなくなった『満州開拓史』や『満州終戦史』などもあります。また、全国の流通ルートに載らない地方の小出版社から出された満州体験記や引揚体験記なども入手困難で貴重です。
 本文庫は当研究所における研究基盤として、今後の学術的研究に大きく貢献することが期待されます。「学問は天下の公器」との理念に基づき、今後段階的に整理を進め、蔵書目録の作成と公開を予定しております。これにより研究の利便性を高め、国内外の学術コミュニティへの情報提供を図ってまいります。また、当研究所としては、藤沼文庫を基盤として、さらなる中国残留邦人関連資料の収集・整備を推進し、「藤沼文庫」の構築を目指してまいる所存でございます。